水田でのアキアカネの復活に向けた試みは、今年で3年目を迎えました。2年後には関係団体に提案書を提出するつもりです。これまでの調査で、冬季湛水(冬水田んぼ)、無農薬、自然農法水田でもアキアカネが発生しない場合があることが分かりましたので(アキアカネ復活の試み2015)、今年は再度この点を調査しています。今回ご紹介するのは、3か所の水田の結果です。

1か所目は「NPO法人鴻巣こうのとりを育む会」が取り組んでいる冬季湛水田(冬みず田んぼ)です。事務局長の宮川さんをはじめスタッフの方に伺ったところ、以下のような方法で耕作しているとのことでした。

この水田は11月に水を張り3月まで湛水状態を維持します(今冬は白鳥が飛来したそうです)。4月上旬に水を一旦落とし、4月中旬に水を張って代掻きを行います。その後雑草が生えそろった段階で(田植え3日くらい前)2回目の代掻きを行って除草します。

田植えは6月上旬で、田植え後は水深を7cmと深い状態で維持します。深水することによって、雑草の発生を抑制することが可能となるとのことです。田植え後は一切田の中には入りません(人が田に入ると田面がでこぼこになり、浅い部分に雑草が生えるからだそうです)。中干はオタマジャクシがカエルになる7月中旬まで延期してます。

稲刈りは9月下旬から10月上旬で、稲刈り後は鶏ふんを撒くものの耕耘はせず、11月に水を張ります。肥料は鶏ふんのほか、米ぬか、土壌改良剤(溶リン、マグマリーン、)グアノ)を施用するとのことです。灌漑水は地下からくみ上げています。

以上のような耕作方法はアキアカネにとって、きわめて好適と考えられます。それにも関わらず私がアキアカネの羽化最盛期に2回、同地を訪れたところ合計で4頭の羽化を確認したのみでした。宮川さんたちにお聞きしても、毎年アカトンボはわずかしか発生しないとのことです。にアキアカネの以外にはホーネンエビ、カブトエビ、ゲンゴロウの幼虫、アマガエル、ヌマガエル、トウキョウダルマガエル、ドジョウ、メダカなどが生息しているとのことです。少ないながら羽化したということは、アキアカネが生育可能な水田であることを示しています。しかし、なぜ少数しか羽化しないのかが問題です。田植え直前の代掻きは、ヤゴに悪影響を及ぼすでしょうが、それが原因とも思えません。このような生き物にやさしい耕作方法でアキアカネが少ないというのは理解に苦しみます。

2か所目は神奈川県横浜市旭区の「横浜市立こども自然公園」、3か所目は緑区の「神奈川県立四季の森公園」です。園内にはいずれも冬季湛水、無農薬、有機栽培の水田があると、地元の秋山さんにお聞きしましたので、秋山さんにアキアカネの発生状況や栽培方法を調べていただきました。詳細は後日秋山さんにまとめていただきますが、結論から言いますと、いずれもアキアカネが発生した痕跡は全くなかったとのことです。冬も水があり、農薬も全く使わないのに、なぜ全くアキアカネが発生しないのか不可解です。

今回の結果も踏まえ、私はアキアカネのヤゴのエサとなるミジンコが大きなカギを握ると考えています。ある程度成長したアキアカネの幼虫は絶食に強いのですが、ふ化直後は絶食耐性がなく、エサの捕食能力も高くありません。このため、アキアカネの孵化場所に、捕食可能な小さなミジンコが無数に発生していないと飢え死にしてしまうのではないかと思うのです。アキアカネの孵化時期の水田でのミジンコの種類別発生量を調べる必要があります。来年はミジンコの専門家の方と一緒に、各地の無農薬水田でアキアカネとミジンコの発生量について現地調査する予定です。