トンボなど身近な水生生物の保全や誘致を目的に、各地でトンボ池やビオトープ池が作られています。私たちも 1986 年から寄居町で荒廃水田を活用したとんぼ公園作りを始めました。このとんぼ公園作りは、単にトンボの保全や誘致ではなく、トンボを通した身近な自然環境の保全を目的としたものでした。しかし、池の環境は時間とともに変化するため、定期的な草刈などの環境管理が不可欠です。また、アメリカザリガニが大発生し、他の生物を食い尽くしてしまうこともあります。さらに最近ではイノシシが出没し、せっかく池を作ってもイノシシに踏み荒らされて壊れてしまうことがあります。このように、トンボ池の管理は多大の労力を要する上、管理していても良好な環境になるとは限りません。一頃、学校でのビオトープ作りがブームになりましたが、最近は下日のようです。その理由は管理の困難さにあるでしょう。そこで、私が提案したいのは池を作るのではなく、水を満たした容器を置く方法です。これは自然保全とは言えないかもしれませんが、トンボの保護という面では効果がありますし、管理が不要でどこでもできるというメリットがあります。我が家で行っている方法を以下に紹介しますので、みなさんも試されてはいかがでしょうか?

場所は寄居町末野の自宅の裏に借りている自給用の家庭菜園です。とはいえ、NPO で借りている畑が別にあるため、そちらの管理に追われてろくに野菜を作っておらず、時折草刈りをする程度の荒れた畑です。秋にはアキアカネやミヤマアカネがやってきますし、シオカラトンボも見かけます。そこで、昨年の秋にホームセンターから様々なプラスチック製の容器を買ってきて畑に置き、水を満たしてトンボの産卵を誘致することにしました。

容器はたらい、桶、トロぶねなど深さやサイズは様々で、底に田んぼや畑の泥を入れたもの と何も入れないものを作りました。その結果、昨年の夏以降、オオシオカラトンボ、ハラビロトンボ、マユタテアカネなどが、容器に飛来し、交尾や産卵を行うことを確認しました。

その結果、昨年の夏以降、オオシオカラトンボ、ハラビロトンボ、マユタテアカネなどが、容器に飛来し、交尾や産卵を行うことを確認しました。

冬のあいだに容器の中を調べると、たくさんのヤゴが見られましたが、春になると生存個体は激減してしまいました。このため、羽化まで育つか心配だったのですが、これまでにシオカラトンボ、オオシオカラトンボ、ハラビロトンボ、ミヤマアカネ、マユタテアカネ、アキアカネの 6 種類が羽化しました。また、シオカラトンボ、オオシオカラトンボ、ハラビロトンボは今年も再び産卵も行っています。畑においただけですので、水深の浅いトロブネでは水温がかなり高くなりますが、ヤゴは高水温に耐えるようです。

今後は水草を入れたもの、地中に容器を埋めたもの、樹の下の木陰に置いたものなど、変化をもたせた容器を用意し、さらに別のトンボも誘致できるかどうか試すことにしています。

皆さんはこの方法だとボーフラが沸くのではないかと心配されると思いますが、ヤゴが発生すればボーフラをことごとく食べてしまいますので、心配いりません。もし、ヤゴが発生せずボーフラばかりだったら、水を捨ててしまえば良いでしょう。

ただし、餌を入れずに放置しますので、餌が少ないためか一つの容器からたくさんの羽化は期待できません。また、羽化期の遅れや小型化することがあるようです。

今回誘致に成功したハラビロトンボは埼玉県の絶滅危惧種に指定されています。ハラビロトンボの住む、背の高い草が密生しない湿地を維持するのは大変ですが、この方法なら容易です。また、飛来したトンボを捉えて、羽にマークして放すと、一旦は飛び去りますが、再び戻ってくるこがわかりました。時には何日も続けてやって来ます。夕方には飛び去るのに、翌朝同じ場所にやってくるということは、この場所を覚えているということです。大きな池ならともかく、小さな容器のある場所をよく覚えていると感心します。容器で羽化したものが、再び容器に戻ってくることもあるようですが、今のところ確認できていません。マークしたトンボに再会できると、とても嬉しくそのトンボを愛おしく感じます。

今からでも間に合います。ぜひ試してみてください。その結果を本誌に寄稿してくださると嬉しいです。